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これからの人生を考えていくなかで、一番イメージがしにくいこと、そして予想がつきにくこと、それは老後の介護問題ではないでしょうか。人生の計画をしていく際に、結婚、出産、教育、老後とどんな暮らしをしていきたいか等はイメージがつきやすいかと思いますが、老後の生活の中で必要となる人もいれば、全く必要がない人もいるのが介護です。しかし、いざ介護が必要になってしまった時、準備をしていなければ十分なケアを受けることができません。在宅か、施設か、それぞれ費用がどれだけ必要なのか、またどのような選択肢があるのかをご紹介します。
1.介護の現状
ご自身に介護が必要になることはまず考えられない。必要ない思う。と考えている若い世代の方は多いのではないでしょうか。老後の介護を必要とせず、元気に暮らしている高齢者の方もいらっしゃいます。要介護レベルの高い、寝たきりの状態になってしまうケースは少ないかもしれません。しかしながら、関節疾患、高齢による衰弱、認知症等で介護や支援を必要とされている方は少なくないのです。まずは日本で現状介護が必要だと言われている人がどれだけいるのかを見てましょう。
1-1.介護認定者数
内閣府がまとめている要介護度別認定者数の推移では、平成20年に455万人だった介護認定者は平成29年には633万人へ約1.4倍も増加しています。統計では要介護レベルが高い方の増加率よりも、比較的軽度な介護もしくは要支援といった方の割合が高くなっています。ということは、要介護5になる可能性は低いけれど、介護や支援が必要となる可能性は高いということです。もしかしたら、必要になるかもしれないと自分に置き換えて考えておくと安心です。
1-2.年金で介護費用は補えるのか?
金融庁から発表された、老後2000万円問題が世を騒がせていますが、当協会コラムでは夫婦世帯では老後の生活には、年金の他に2000万円~3000万円の貯蓄が必要であるとお話させて頂いています。ライフスタイルの違いや退職金の有無によっても不足金額は異なります。家計調査を基にしたデータでは、一人あたりの平均年金受給額は12万円で、生活費は16万円となっており、生活費の不足に加えて、介護や医療費が必要になってきます。老後生活は年金だけでは介護費用の準備としては安心できませんね。
2.介護の費用
さて、では実際に介護にはどれくらいの費用が必要になってくるのでしょうか。老後の介護サービスといっても、在宅介護なのか、施設に入所して介護を受けるのかによって、費用は大きく変わってきます。将来必要となる可能性があるかもしれない老後のお金として、頭の中にしっかり入れておきましょう。
2-1.在宅介護にかかる費用
家計経済研究所の2016年の調査によると、月々の在宅での介護にかかる費用は平均5万円という結果でした。介護保険による介護サービスへや医療品(薬やおむつ等)の購入費用が主になっています。こちらは要介護レベルがあがるにつれて多くのサービスが必要となりますので、介護にかかる費用が上がっていきます。
また、在宅介護をスタートするにあたり、自宅をリフォームしたり、介護用のベッドや車いすを購入することもあり、介護保険から一定額の給付がありますが、こちらにも平均15-20万円は必要となります。
2-2.老人ホームにかかる費用
老人ホームや介護施設は種類がとても多く、サービスや内容、入居条件等も施設によって様々です。 詳しくは、「独り身の老後資金、いくら必要?もしもに備えて今から準備!」のコミュニティの部分で種類と費用の紹介をしておりますので、ご覧ください。
今回は民間の介護付き老人ホームと、公的の特別養護老人ホームで平均の費用をご紹介します。民間の介護付き老人ホームは、他の老人ホームと差別化を図るために、公的施設に比べてサービスが充実しているために、月額利用料は20万円前後、そして入居時には一時金としてさらに費用がかかります。公的施設の特別養護老人ホームは入所は難しかったり、条件が設けられていたりと自由に選ぶことができない傾向があり、個室のほかに相部屋や大部屋となっているところもありますが、月額利用料が12万円前後と費用負担を抑えることができますね。
2-3.介護の期間
介護費用は一度発生するとその後も継続的に必要になってきます。平均介護期間で計算して生涯必要となる介護費用をみていきましょう。厚生労働省から発表されている「平均寿命」と「健康年齢」から介護が必要となる期間を出すことができます。
平均介護期間は男性は9.79年、女性は12.93年です。介護付き老人ホームの場合には、20万円×12か月×9年=2160万円、2880万円となり、特別養護老人ホームの場合には、1296万円、1728万円がかかってきます。しかしこれはあくまでも最初から施設に入居した場合となりますので、約半分程度を考慮しておくといいでしょう。
在宅介護の場合には、540万円と720万円と大幅に費用が下がりますが、介護をする家族の負担が大きくなりますので、きちんとした話し合いと無理のない計画が必要となってきます。
3.これからの介護
慢性的な人手不足や、たびたびニュースに取り上げられる施設での虐待、施設に入るにも、訪問型の介護サービスを利用するのにも、不安因子が多くあります。十分なサービスが受けれないことや、プロとはいえ他人に任せることを躊躇する方も多く、自宅でパートナーや親の介護をしていく、もしくは自身の介護を子どもやパートナーに任せる場合があります。人生100年時代と言われ平均寿命が年々のびている日本では、介護者の年齢も上がってくることになり、大変深刻な問題となってきています。
3-1.老老介護
65際以上の高齢者を、65際以上の高齢者が介護しているケースのことを老老介護といいます。要介護者がいる世帯では、高齢者の夫を妻が介護したり、親の介護を65歳を超えた子どもがしているという状態がほとんどです。厚生労働省の平成25年の国民生活基礎調査では在宅介護をしている世帯の半数51.2%がこの老老介護に該当するという結果が出ています。
高齢者が介護している場合、体への負担が大きく肉体的に、そしてだんだんと精神的なストレスや孤立感に繋がることで、虐待に繋がったり、介護者に介護が必要となり共倒れとなってしまうケースがあります。
3-2.認認介護
老老介護かつお互いに認知症を患っている高齢者同士での介護の状態を認認介護と言います。自分に認知症の自覚がないまま介護を続けているケースもあり、この認知症から要介護状態を引き起こす要因にもなると言われています。どの介護が必要なのか、なにをやったのかを忘れてしまうことで事故が発生したり、お金の管理が出来ずに詐欺にあったりと、注意や管理をしっかりとできない高齢者同士の介護には危険がつきものです。
4.介護について考える時には
老後の介護については、はやめに家族で考えて話し合いをしておくことがおすすめです。介護が必要になったときというのは、自分だけの問題ではないためです。親の介護、パートナーの介護、そして自分の介護と、どのケースにも対応できる資金の準備と、在宅介護の場合の心の準備があると安心です。
5.介護は費用だけではない
ここまでの介護の現状と費用の説明から、他人事ではなく介護が必要なレベルが違えど、老後の生活をしていく上では誰にでも必要となりえることだとご理解頂けたかと思います。ご自身が介護者になる場合と、要介護者になる場合がありますが、前者で在宅介護をしている方は精神的なストレスを感じる方が69.4%もいらっしゃいます。お住まいの地域によっては介護者同士のコミュニティで疲れた気持ちや悩みについて話をする「介護家族の会」が開かれていることがあります。ご自分だけで抱え込まずに、家族や他の介護者の方、プロの介護者へ相談をしていきましょう。また、介護保険サービスとして、訪問入浴の介助や、数時間の訪問介護等を利用することも選択肢の一つとして考えておきましょう。
老後の中でも介護に関しては、なかなか若いうちからは考えることが難しいですが、知識をもっているだけでも変わってきます。ライフプランニング協会では、ライフイベントの中でも老後だけ、もしくは老後の中でもココの部分だけを聞きたいというご相談も承っております。お気軽にお問い合わせ下さい。